「新学習指導要領」 「脱・ゆとり」本格実施

夏休みが終わり2学期がスタートしたが、小学校では今年度から、新しい学習指導要領が本格実施されている。ポイントは「脱・ゆとり教育」。国の方針で勉強する量が大幅に減っていた公立小学校でも、教科書のページが増えるなど内容が大幅に回復している。来年度以降は中学校と高校でも順次、本格実施される。改めて新学習指導要領を整理した。(菅原慎太郎)

 学習指導要領は、小中学校、高校、特別支援学校の各学校が教える内容について文部科学省が示す手引書のようなものだ。法律や政令ではないが、学校教育法と施行規則を根拠に定められており、学校の教育方針を方向付けている。

 改定は10年に1回程度の間隔。今回の新学習指導要領は平成20年に案が示され、その後、正式に決定された。子供の能力伸長や伝統・文化の尊重などの理念に基づき、18年に改正された教育基本法の精神を反映する内容となっている。

 その中で、注目されているのは授業時間など、学校で学ぶ時間や量を大幅に増やした点だ。「ゆとり教育」路線で授業時間などを大幅に削減した14年の旧学習指導要領から、完全に方向転換した。

 小学校では、45分授業を「1時間」とする標準授業時数が1、2年生で週2時間、3~6年生で週1時間増やされ、中学校でも50分授業を「1時間」とする標準時数が週1時間増やされた。時間だけでなく内容もレベルアップ。旧指導要領では小5で「3」としか教えなかった円周率も「3・14」と教えるようにした。
高校では授業時間増は明示されていないが、やはり内容は充実した。特に、英語では標準単語数を1300から1800に増やし、理数系科目でも内容が大幅に増やされた。

 実は、多くの学校では、22年度以前から新指導要領の趣旨を先取りして、少しずつ教育内容のレベルアップが行われてきた。そのため、必ずしも、すべての小学校で今年度、急に授業量が増えているわけではない。ただ、それは、副教材や正規の授業時間以外の有効利用で行われてきたこと。本格実施で「脱・ゆとり」が揺るぎないものとなったといえる。新要領に基づいて作成され、今年度から使われている小学校の教科書は、主要教科で平均28%増ページ。来年度以降の中学校と高校の教科書も、やはり内容増となる見通しだ。

 新要領の背景には、学力低下の社会問題化があった。「詰め込み教育」批判から導入されたゆとり教育だが、国内外の調査で日本の子供の学力急落が明らかになり、大学では、新入生の基礎学力不足が問題に。国の方針だけにとらわれず、学習指導要領の範囲を超えた教育が行われる私立中学校の人気が急騰した。

 多くの保護者の不安を受けて改定された新要領。ただ、文科省ではかつて推進していた「ゆとり」からの脱却をはっきり認めたくないようで、「これからは『ゆとり』でも、『詰め込み』でもない。『生きる力』を身に付けてほしい」と、新要領の趣旨を説明している。

■196字の新常用漢字も

 新学習指導要領では、昨年11月に告示された196字の新常用漢字についても、教えるように定めている。文部科学省は11月の時点で、すでに指導要領の改定を終えていたが、急遽(きゅうきょ)部分改定して、新常用漢字を加えた。

 新常用漢字には「鬱(うつ)」や「語彙(ごい)」の「彙」など難しい漢字が多数含まれるが、中学校で「大体を読む」、高校で「主な漢字を書ける」ことが求められる。

 こうした漢字は、平成24年度の高校1年が大学を受験する際、試験問題として当たり前に出題される可能性もある。

 新常用漢字だけでなく、文科省では今後、必要が生じた場合、学習指導要領を部分的に改定することにしている。例えば、領土問題の意識の高まりを受け、「尖閣諸島はわが国固有の領土」などと教科書に記述させるようにすることも検討されている。

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(2011.9.7  産経新聞より転載)

 

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