新学習指導要領のポイント 小学校での「外国語活動」はこうなる!

2011(平成23)年4月より、日本のすべての小学校において「外国語活動」が実施されます。小学校段階での外国語教育の導入については、さまざまな立場・論拠で賛否が大きく分かれ、実に20年以上も社会的に議論されてきましたが、2008(平成20)年に告示された新学習指導要領でようやくスタートすることになったのです。

1)「外国語活動」必修化の背景と目的

小学校における英語教育は、実はかなり以前から多くの小学校で取り組まれていました。正式には1998(平成10)年告示の学習指導要領に「総合的な学習の時間」における「国際理解に関する学習の一環としての外国語会話」(英会話)として明記されたのが最初でした。この学習指導要領が2002(平成 14)年度に全面実施されてから、4年後の2006(平成18)年度には94.0%と、ほぼすべての小学校が何らかの形で英語教育に取り組むまでに広がりました(以上、『第1回小学校英語に関する基本調査(教員調査)速報版』ベネッセ教育研究開発センター、2006)。しかし、この段階までの小学校での英語教育は、その実施の有無も含めて各学校に判断を委ねていたため、学校や地域による取り組み内容の違いが大きくなり、これが課題として指摘されるようになってきました。

一方で、近年は経済などさまざまな分野で国際化が進み、殊に国際共通語としての英語の重要性はますます高まってきています。日本も2003(平成15)年に「『英語が使える日本人』の育成のための行動計画」に沿って英語教育改革が進められ、その中でも小学校における英語必修化は課題の一つとして掲げられていました。日本だけではなく、世界各国でも外国語教育の重要性が高まるとともに早期化が進み、アジアのみならず世界の多くの国・地域で、小学校段階から外国語(多くは英語)が必修化されました。前述のような日本の小学校での英語教育の広がりも、このような社会的状況から保護者・地域の英語教育へのニーズが高まり、これに学校が応えてきたという側面もあるようです。

また、小学校での英語教育の広がりの背景には、小学校からの英語教育の効果に期待する考え方もあったようです。中学校からいきなり英語を学ぶのではなく、発達段階的にも柔軟性に富み、繰り返しをいとわない小学生段階のほうが、あいさつ等の簡単な英語表現をとおして英語に慣れ親しみやすく、コミュニケーションへの積極的な態度を育むことができるという考え方です。しかし、この点に関してはさまざまな立場、考え方により意見が分かれ、社会的にも大きな議論となりました。

このような背景を受けて、2006(平成18)年3月に中央教育審議会外国語専門部会が小学校での英語必修化を方向づける「審議のまとめ」を公表し、これが2008(平成20)年告示の新学習指導要領での「外国語活動」必修化につながりました。主な内容は、以下の通りです。

 ●小学校高学年(5・6年生)で年間35単位時間、週1コマ程度

 ●教科とは異なる位置づけ(数値評価なし)

 ●学級担任とALT等とのティーム・ティーチングを基本とする

 ●国による共通教材、ICT活用などによる質的水準の確保

2)移行措置段階での施策

しかし、既に多くの小学校で英語教育が行われていたとはいえ、必修化が決定した当時は年数回~月1回程度、ALT等の外部人材に頼った教育内容の学校が過半数を占めるのが実態でした。そこで、文部科学省は新学習指導要領の全面実施に向け、さまざまな条件整備を進めました。新学習指導要領が告示された 2007(平成19)年度より、全国約550校を「拠点校」に指定、地域の中心として先進的に英語教育を実践するよう支援しました。また、 2009~2010(平成21~22)年度の移行措置期間は、週1時間の「外国語活動」先行実施を可能にする措置も行いました。さらに、各学校に任せていた教育内容についても、共通教材『英語ノート』を制作し、移行措置期間での先行実施が始まる前に、全国の小学校に5・6年生児童・担任分を配布しました。さらに、ALT等のいない学校・地域等でも「外国語活動」ができるよう、『英語ノート』デジタル版やCDも配布しました。また、全国5ブロックで文科省主催の中核教員研修を行ったほか、各学校にも2010(平成22)年度末までの2年間で30時間程度の校内研修を実施するよう求めるなど、現職教員研修も進めています。

このように、2007(平成19)年度の新学習指導要領告示以降、国は矢継ぎ早に「外国語活動」必修化に向けた条件整備の施策を進め、各地域・学校でも準備を重ねてきています。次回から、2010(平成22)年に実施した「小学校での外国語活動について」の調査結果をご紹介します。
(提供:Benesse教育情報サイト)