「うんち教室」小学校が力

低学年を対象 生活習慣見直し促す

 子どもに、排せつの大切さや体のしくみ、トイレの使い方などを教える「うんち教室」が小学校で広がり始めている。

 すっきりと排せつするためには十分な睡眠や食事、運動が欠かせない。生活習慣を見直す良いきっかけになるようだ。

 東京都世田谷区の等々力小学校は2008年から毎年、1年生を対象に「うんち教室」を開いている。昨年は11月に約90人を対象に行った。教壇に立ったのは、養護教諭の清水千穂さん。

 教材は、動物園から借りてきたゾウのふん。乾燥していてにおいもない。「えー、やだ」「汚い」「臭い」と大騒ぎしていた子どもたちも、間近で見たり、においを確かめたりしていくうちに「臭くない」「草が混じっている」「食べたものが出てきたんだ」と様々なことに気づくという。

 「人間もバランスのいいご飯を食べた時は、臭くないうんちがスルッと出ます。カチカチやベチョベチョのは臭いし、おなかも痛いよね」と清水さんは子どもに語りかけた。

 うんち教室を始めたのは、トイレを大事に使う気持ちを育てたいと考えたのがきっかけだった。当時、1年生が使うトイレでは、和式便器が汚れたまま放置されるなど、問題が起きていたという。授業ではトイレの使い方やマナーなども丁寧に教える。

 授業後の子どもたちは、自分の排せつの状態を確認するようになったり、給食で出た野菜を食べようと努力したりと、変化が見られるという。

 「いいうんちは食事、睡眠、運動の三拍子がそろってこそ。子どもに生活を見直そうといっても理解しにくいが、いいうんちを出すように頑張ろうといえば伝わりやすく、生活習慣の改善に役立つ」と清水さんは話す。

 「うんち教室」は、NPO法人「日本トイレ研究所」(東京)と、トイレットペーパーなどを製造する「王子ネピア」(同)が07年度に始めた。公募した小学校に同研究所のスタッフが無料で出前授業を行ってきたが、実施できるのは毎年5~7校。しかし要望は多く、毎年100校近くからの申し込みがあった。

 そこで、09年度からは授業を自前で行える先生を養成するための研修会をスタート。これまでに約60人が参加し、関東近郊の小学校約50校で教室が開かれた。

 同研究所が09年に小学校低学年420人の排便調査をしたところ、「毎日出た」のは138人(33%)。73人(17%)は「3日以上出ていない」で、「7日間出ていない」子どもも14人(3%)いた。

 「学校のトイレは古く、『暗い臭い汚い』の3Kのところが多い。そのため学校でトイレに行けない、うんちできないという子どもが大勢いる」と同研究所の加藤篤さんは指摘する。「すっきり出なければ落ち着かないし、勉強にも集中できない。うんちの大切さを子どもたちに伝えると同時に、古いトイレの改修も必要」と加藤さんは話している。

(2011.1.30  読売新聞から転載)