「土曜授業」復活の動き(埼玉)

新学習指導要領で小中学校の学習量が増えるのを受け、県内で土曜授業を復活させる動きがじわりと広がってきた。平日に授業時間を増やすと、放課後の部活動や、学校行事、生徒と教職員の面談に充てる時間が減ってしまいかねないからだ。ただ、教職員組合は「教員の負担増につながる」と反対しており、教職員の理解を得ることが課題の一つになっている。

 新学習指導要領は2011年度に小学校で、12年度には中学校で完全実施される。基礎学力の向上に重点が置かれ、授業時間数の増加は小中で年間35~70時間に上る。県教育局の幹部は「文部科学省は週5日制の範囲内で対応できる授業時数だと説明しているが、特に小学生への負担は大きい」と指摘する。

 11年度から土曜授業を月1回、実施するのは越生町。さいたま市は年1回以上としている。坂戸市も実施する方向で、市内の小中23校で保護者アンケートを行うなどの準備を進めている。実施回数は検討中だ。

 所沢市は12日、「年5日以内とすることが望ましい」との意見を添え、土曜日、夏休み、冬休み、開校記念日、「県民の日」を授業に充てても良いとする見解を市内の校長会に示した。土曜日を選択するかどうかは、校長の裁量に委ねた。

 同市の小中学校は2学期制を採用し、年間授業時間数はもともと、3学期制を取る自治体などより20時間ほど多い。それでも、市教育委員会は「12年度に中学校で授業時間が増えると、現在の授業日数では心もとない」としている。

◆勤務体系の調整必要

 土曜日に授業を行わない学校週5日制は、「ゆとり教育」の一環で1992年9月に導入された。当初は月1回だったが、95年度には月2回に増やし、2002年度に完全週5日となった。

 公立小中学校の教職員は、完全週5日制を前提に勤務体系が組まれている。このため、県教職員組合(埼教組)は、土曜授業を復活させると「労働基準法が定めた週40時間の法定労働時間を教職員は維持できなくなる」と主張している。土曜授業をどうしても行うなら、翌週の平日に振り替え休日を取らせるべきだとする。

 県内自治体が土曜授業に関心を寄せる中、頭を悩ませている点の一つが、こうした教職員の勤務体系の問題だ。月1回以上と実施頻度の高い越生町には、昨年11月の方針決定直後、県内10以上の自治体から問い合わせがあった。質問の多くはやはり、「教職員の休日を含めた勤務体系をどうするのか」という点だった。

 同町は、土曜授業でつぶれる教職員の休みを、冬休みや夏休みに振り替えることにしている。埼教組が主張する翌週平日の休日取得という方法ではないが、摩擦はなかったという。そもそも土曜授業復活には現場が積極的で、町教育委員会の担当者は「実施には教職員が理解してくれたことが大きかった」と話す。


◆校外活動との兼ね合い

 課題はほかにもある。国の「ゆとり教育」推進の掛け声の下、これまで地域の様々なグループ・団体が学校週5日制に協力し、週末の児童・生徒の活動をサポートしてきた。児童・生徒の保護者には、土曜日には授業がないことを前提に、スポーツなどの活動に子どもを参加させてきた人が少なくない。

 このため、土曜日に授業を実施する学校は、学校外の活動との兼ね合いに配慮が必要になる。この点、越生町は、授業日は原則第4土曜と決め、年間授業スケジュール案を早々と保護者に配布した。

(2011.1.24  読売新聞から転載)