都市と地方に温度差

教育ルネサンス(7)  都市と地方に温度差

「さあ1分で解くんだよ。スピードを大事に、集中して」。講師の合図で、子どもたちが一斉に国立の福岡教育大学付属の入試の模擬試験に取りかかった。11月中旬、「学習受験社ガゼット」本社のある中央教室(福岡市中央区)の年長コース。試験を受ける12人の表情は真剣そのものだ。

 福岡市と福岡県久留米市に3教室を展開する「学習受験社」は、県内で幼児教室と中学受験塾を開校して約40年。小学校受験では、県内の国立、私立への合格実績でトップを誇る。子ども4人に講師1人のきめ細かな指導が特徴で、講師手作りのプリント教材は年間約3000枚に上る。

 県内の小学校受験事情について、同社の上迫(うえさこ)純一社長(61)は、「志望校は、福岡教育大付属の3小学校が人気の上位。いずれも中学までで、付属中を経て、トップクラスの県立高校、九州大学へと進学するのが『エリートコース』とされている」と解説する。

 受験準備は、かつて家庭でする場合が多かったが、「10年余り前から付属小のペーパー試験が難しくなり、教室通いが目立つようになった。近年、抽選よりも、先に行われる試験で落とす割合が高くなったことも拍車をかけている」と、上迫社長は見ている。

 「付属小」「私立」「併願」で1年と2年のコースがあり、最も多いのは「付属小」の1年コース(週1日2時間~2時間半で、月額約2万3000~2万6000円)。県内ではこの数年、私立の西南学院小学校や東明館小学校などが開校し、併願が増えているが、あくまでも第1志望は付属小という。


 首都圏と関西、北九州以外ではどうか。全国の小学校受験情報をネットで提供する「小学校受験総合研究所」の高橋秀幸代表によると、愛知県や広島県など受験熱が高まってきている地域もあるが、首都圏のような盛り上がりは見られない。

 「地方は私立小が少なく、国公立志向が強いため、小学校受験の中心は国立。だが、複雑な問題は出されず、倍率も低いため、友だちと外で遊び、自分で服をたためて、お母さんのお手伝いができれば対応できる学校が多い」と、高橋代表は解説する。

 幼児教室で季節感や生活習慣を学び、私立小を目指す。お受験熱は都市部特有の現象かもしれない。

 メモ 
学習受験社によると、福岡教育大学付属の3小学校の2010年度入学の受験倍率は、福岡小(福岡市中央区)が男子4・7倍、女子4・2倍、小倉小(北九州市)が男子2・8倍、女子1・8倍、久留米小(福岡県久留米市)が男子2・0倍、女子2・2倍という。出願倍率が約9~80倍にもなる都内の国立大付属小と比べると、大きな開きがある。

2010年12月25日

  読売新聞から転載)